「なんとなく人が多そう」では戦略は立てられない
商圏の来街者を分析することは、テナントの物件選定・出店計画・集客施策の前提となる基礎情報です。しかし「人が多い感じがする」「土日は賑わっている」という感覚的な把握に留まり、データに基づいた分析をしていない事業者は多いです。
本記事では、スマートフォンGPSデータやカウンターを使った来街者分析の具体的な方法を解説します。
1. 来街者分析で把握すべき指標
基本指標
| 指標 | 意味 | 活用場面 |
|---|---|---|
| 時間帯別来街者数 | 何時に何人いるか | 営業時間・ピーク対応計画 |
| 曜日別来街者数 | 平日vs休日の差 | 定休日・特売日設定 |
| 来街者の居住地 | どこから来ているか | 広告出稿エリアの決定 |
| 滞在時間 | 何分間エリアにいるか | 購買機会の評価 |
| 来街頻度 | 週何回来るか | リピート施策の設計 |
2. スマートフォンGPSデータの活用
データサービスの種類と選定
スマートフォンのGPS・Wi-Fiデータを集約したサービスが複数あり、商圏分析に活用できます。
無料〜低コストで試せるサービス
- Google マップ(Popular Times):各施設の時間帯別混雑度が無料で確認可能。物件候補近くの施設の混雑状況から来街者の概要を把握できる。
- RESAS(地域経済分析システム):政府が提供する無料の地域データ分析ツール。市区町村別の人口動態・産業構造・観光来訪者データが閲覧可能。
有料の専門データサービス
- Agoop(ソフトバンク子会社):GPS人流データ。月単位の来街者数・属性・行動軌跡が分析可能。
- ナイトレイ(LiveBoard):飲食業向けの人流分析に特化。
- Location Value(マップマーケティング):商圏分析と人流データを組み合わせたサービス。
3. 自動カウンターによる実測調査
カウンターの種類
| 種類 | 計測対象 | 費用 |
|---|---|---|
| 赤外線センサーカウンター | 通行人数(入口・通路) | 3〜15万円/台 |
| ビデオカウンター(AI解析) | 人数+属性(性別・年齢推定) | 10〜50万円/台 |
| Wifiプローブカウンター | スマホ保有者の通行数推定 | 5〜20万円/台 |
カウンター設置の実践例
テナント出店前の調査として、候補物件の前の歩道にカウンターを1〜2週間設置して実測します(所有者の許可が必要な場合があります)。
設置場所と読み取れること
- 物件前の歩道:その物件前を通過する人数
- 交差点の角:エリア全体の通行量
- 競合店の入口付近:競合の実際の来客数推定
4. 無料でできる簡易来街者調査
本格的なデータ購入前に、以下の方法で概要を把握することができます。
ステップ1:Google マップで事前確認
対象エリアの飲食店・施設の「Popular Times」(混雑する時間帯)を確認する。直近の実測値に近いデータが無料で得られる。
ステップ2:実地カウント調査
候補物件の前に15〜30分立ち、通行人数を手動でカウントする。3〜4回(朝・昼・夕・夜)繰り返すことで時間帯別の傾向が見えてくる。
簡易カウントシート例
``
調査日時:○月○日(平日/土日)○時〜○時
調査場所:○○駅前○番出口付近
15分間通行人数:○人
うち推定ターゲット層(例:20〜40代女性):○人
``
ステップ3:競合調査との組み合わせ
同日に競合店の前でも同様のカウントを行い、「競合への来店転換率」を推計します。
5. 分析結果を出店判断に活かす
判断基準の設定例
飲食業(客単価1,000円)で月間売上300万円を目標とする場合:
``` 必要月間客数 = 300万円 ÷ 1,000円 = 3,000客 必要日間客数 = 3,000客 ÷ 25日 = 120客/日
1日の推定通行人数:3,000人(調査データ) 必要来店転換率 = 120 ÷ 3,000 = 4% ```
転換率4%は飲食業では「普通〜やや困難」の水準です。同業態の競合が多い場合は転換率がさらに下がることを考慮します。
来街者分析は「出店する・しない」の判断だけでなく、「どんな業態・価格帯・営業時間で勝負するか」という戦略設計の基礎データにもなります。定期的なデータ更新を行い、出店後の集客改善にも活かしてください。
