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初めてテナントを借りる方へ

店舗・テナントを借りるのは、多くの方にとって人生で数えるほどしかない大きな意思決定です。 事業用の賃貸は、住居用とは仕組み・金額・契約内容・退去時の負担が大きく異なります。 住居用の感覚のまま進めると、初期費用の見込み違いや退去時の高額な原状回復費といった想定外の出費につながりかねません。 このページは、物件探しから初期費用・審査・契約・開業準備までの全体像を、初めての方にもわかりやすくまとめた総合ガイドです。

初めての店舗・テナント賃貸の検討

事業用テナントの3つの特徴

  1. 初期費用が高額:保証金(敷金)6〜12ヶ月分に礼金・仲介手数料・前家賃が加わり、さらに内装工事費や造作譲渡代金が必要になることもあります。
  2. 原状回復義務が重い:事業用は借主負担でスケルトン(内装撤去)に戻すのが原則とされることが多く、退去時に高額な工事費が発生する場合があります。
  3. 用途制限がある:物件ごとに許可される業種が決まっており、申込前に貸主の承諾が必要です。希望業態が可能かを早めに確認しましょう。

住居用賃貸との違い

「家を借りた経験があるから大丈夫」と考えると、事業用ならではの違いに戸惑うことがあります。 代表的な相違点を整理しました。

項目住居用(参考)事業用テナント
保証金・敷金賃料1〜2ヶ月分程度賃料6〜12ヶ月分が相場
仲介手数料原則 賃料0.5ヶ月分+税承諾不要で 賃料1ヶ月分+税まで
原状回復通常損耗・経年劣化は貸主負担が原則借主負担・スケルトン返しが一般的
審査本人の収入・勤務先など事業の収支計画・決算/確定申告が中心
用途居住目的物件ごとに使える業種が制限される

※ 上記は一般的な傾向です。実際の条件は物件・貸主・契約内容により異なります。

初期費用の内訳

事業用テナントの初期費用は、保証金(敷金)の比重が大きく、賃料の10〜15倍前後になることも珍しくありません。 金額は立地・業態・物件状態によって大きく変わるため、下表は目安として把握し、個別物件は仲介会社に確認してください。

保証金(敷金)

賃料の6〜12ヶ月分

退去時の原状回復費や賃料滞納の担保。住居用の敷金より高額で、償却(返還されない一部)が定められることもあります。

礼金

賃料の0〜2ヶ月分

貸主へのお礼として支払う返還されない費用。物件や地域により設定されないこともあります。

前家賃

賃料の1〜2ヶ月分

契約開始月(および翌月分)の賃料を契約時に前払いします。日割り精算となる場合もあります。

仲介手数料

賃料の1ヶ月分+消費税

事業用建物の媒介では、宅地建物取引業法上、依頼者の承諾がなくても賃料1ヶ月分+消費税までが上限です(居住用の原則0.5ヶ月分とは扱いが異なります)。

造作譲渡代金(居抜き時)

物件により大きく変動

前テナントの厨房設備・什器・内装を引き継ぐ場合に前テナントへ支払う費用。設備の状態と残存価値で金額が決まります。

内装・設備工事費

業態・坪数により大きく変動

スケルトン物件では一から内装を造作します。飲食店は厨房・排気・給排水設備が必要で坪当たり単価が高くなりがちです。

運転資金

月額固定費の6ヶ月分目安

開業直後は売上が安定しないため、賃料・人件費・仕入れ等の固定費を当面まかなえる手元資金を確保しておくと安心です。

正確な総額は物件の賃料・条件を入れて試算するのが確実です。初期費用シミュレーターで必要資金の概算を確認できます。

審査と必要書類

事業用の入居審査では、借主が安定して賃料を支払えるかを「事業の信用力」で判断します。 連帯保証人を立てるか、家賃保証会社を利用するかは物件により異なります。

法人の場合

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 直近の決算書(数期分を求められることが多い)
  • 事業計画書(出店動機・収支見込み)
  • 代表者の本人確認書類・印鑑証明書

個人事業主・これから開業する方

  • 確定申告書の写し(開業済みの場合)
  • 事業計画書・資金計画書
  • 本人確認書類・印鑑証明書
  • 開業前は自己資金や保証人で信用を補うことが多い

※ 必要書類は物件・保証会社により異なります。詳細は必要書類ガイドをご覧ください。

契約形態と重要事項説明

賃貸借契約には大きく「普通借家契約」と「定期借家契約」があり、更新の有無や期間満了時の扱いが異なります。 契約前には宅地建物取引士による重要事項説明(宅地建物取引業法第35条)を受けることが義務付けられています。

普通借家契約

原則として更新があり、貸主からの更新拒絶・解約には正当事由が必要とされるため、借主の立場が比較的安定しています。長く同じ場所で営業したい場合に向きます。

定期借家契約

契約期間満了で更新されず終了します(再契約は合意があれば可能)。締結には書面による契約と、契約前に「更新がない」旨を記載した書面での事前説明が必要です(借地借家法第38条)。

※ 公正証書での作成が法律上必須なのは事業用定期借地権(土地の賃貸借)です。建物の定期借家契約は公正証書である必要はなく、書面であれば足ります。契約形態の細部は物件により異なるため、重要事項説明で必ず確認してください。

融資・手付金・仮押さえのタイミング

開業資金を金融機関からの融資でまかなう場合、「融資が下りる前に良い物件が出てしまう」というジレンマが生じます。 一方で、融資が確定する前に契約を急ぐと、審査に通らなかったときに支払い済みの費用を巡るトラブルになりかねません。

  • 仮押さえ(申込):申込書を提出して物件を一定期間確保します。法的拘束力は弱く、貸主の判断次第で他者に決まることもある点に注意します。
  • 申込金(預り金)と手付金の違い:「申込金(預り金)」は契約前なら返還を受けるのが原則です。一方「手付金」は契約成立を前提とした性質を持ち、借主都合でやめると放棄になる場合があります。書類の名称と返還条件を必ず確認しましょう。
  • 融資との順序:融資審査では具体的な物件情報(賃料・面積・見積り)が求められることが多く、物件をある程度特定してから融資申込に進むのが現実的です。融資の確度と物件確保のタイミングは仲介会社・金融機関と相談しながら調整します。

※ 詳しくは融資前に物件を押さえられる?で解説しています。

原状回復と退去時の負担

契約時に見落とされがちなのが退去時の費用です。事業用賃貸では、借主が費用を負担して内装を撤去し、 契約開始時の状態(多くはスケルトン)に戻すのが一般的です。住居用で適用される 「通常損耗・経年劣化は貸主負担」という原則は、事業用には当てはまらないことが多い点に注意が必要です。 回復の範囲(どこまで撤去・復旧するか)は契約書の特約で定まるため、入居前に契約前チェックリストで確認しておきましょう。居抜きで入居した場合の引継ぎ範囲も併せて取り決めておくと安心です。

開業に必要な許認可(業種により異なります)

業種によっては、営業を始める前に行政の許可・届出が必要です。許認可は工事内容や設備にも関わるため、 物件契約・内装着工の前に管轄窓口へ事前相談しておくと手戻りを防げます。代表的な例を挙げます。

  • 飲食店:保健所への飲食店営業許可(食品衛生法)が必要で、施設が基準を満たしているか検査を受けます。店舗ごとに食品衛生責任者を置く必要があります。深夜に酒類を提供する場合などは、別途の届出が求められることがあります。
  • 消防関係:建物・店舗の規模や収容人員によっては、防火管理者の選任や消防への届出が必要になる場合があります。詳細は管轄の消防署に確認してください。
  • その他の業種:美容・理容、医療、酒類販売、古物商など、業種ごとに固有の許認可が定められていることがあります。出店予定の業態について、必要な手続きを早めに調べておきましょう。

※ 許認可の要否・要件は業種・自治体・店舗の規模により異なります。正確な内容は管轄の保健所・消防署・行政窓口や専門家にご確認ください。

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