坪単価とは何か
店舗やテナントを借りようとするとき、物件情報に「坪単価○○円」という表記を目にすることがあります。坪単価とは、1坪(ひとつぼ)あたりの月額賃料のことです。たとえば「坪単価2万円」と書かれていれば、1坪の空間を1か月借りるのに2万円かかるという意味になります。
坪(つぼ)は日本の伝統的な面積の単位で、1坪は約3.3058平方メートル(㎡)に相当します。より正確には1坪=3.30578...㎡ですが、実務では「1坪≒3.3㎡」として計算することがほとんどです。
坪単価は、異なる広さの物件どうしを同じ基準で比較するために使われます。20坪の物件と40坪の物件では当然、月額賃料の合計額が大きく違います。しかし坪単価が同じであれば「単位面積あたりの割高・割安感が同等」と判断できるため、物件を選ぶ際の比較指標として広く使われています。
坪単価から月額賃料を計算する方法
月額賃料の基本的な計算式は次の通りです。
月額賃料 = 坪単価 × 坪数
具体的な例で見てみましょう。
【計算例①】 坪単価:1万5,000円/坪 物件面積:20坪 → 月額賃料=15,000円 × 20坪 = 30万円
【計算例②】 坪単価:2万2,000円/坪 物件面積:15坪 → 月額賃料=22,000円 × 15坪 = 33万円
このように、坪単価さえわかれば「坪単価 × 坪数」で月額の家賃総額をすぐに計算できます。物件の募集情報には坪数(または㎡)と坪単価が記載されていることが多いため、この式を覚えておくと便利です。
なお、年額賃料を知りたい場合は月額賃料をそのまま12倍するだけです。上の例①であれば、30万円 × 12か月 = 年間360万円となります。
坪数と㎡の換算方法
物件の面積表記は「坪」で記載されているケースと「㎡」で記載されているケースの両方があります。坪単価の計算に使うためには、㎡表記を坪に変換する必要があります。換算式は以下の通りです。
坪数 = ㎡ ÷ 3.3
たとえば物件面積が66㎡と表記されている場合、66 ÷ 3.3 = 20坪となります。
逆に坪数からの㎡換算は次の式です。
㎡ = 坪数 × 3.3
20坪 × 3.3 = 66㎡、という計算になります。
実務では3.3を使った割り算・かけ算で問題ありません。厳密な値(3.30578)を使いたい場面は専門的な契約計算の場合に限られます。
㎡表記の物件でも坪単価を求めることができます。
坪単価 = 月額賃料 ÷ (面積㎡ ÷ 3.3)
【計算例③】 月額賃料:24万円 物件面積:40㎡ 坪数:40 ÷ 3.3 ≒ 12.1坪 → 坪単価=240,000円 ÷ 12.1坪 ≒ 約1万9,800円/坪
このように坪単価を逆算することで、㎡表記の物件とも同じ土俵で比較できます。
共益費込み坪単価の計算と「込み・別」の読み方
物件情報を見るとき、賃料の構成には「共益費込み」と「共益費別」の2パターンがあります。表示されている坪単価がどちらを指しているかを確認しないと、物件どうしの比較を誤ります。
共益費別の場合:坪単価はあくまでも純粋な家賃のみを指します。実際に毎月支払う金額は「月額賃料+共益費」になります。共益費は建物の管理費・共用部の清掃費・エレベーターや共用照明の電気代などをテナントで分担するものです。共益費の目安は賃料(坪単価)の10〜30%程度のことが多く、月額賃料に上乗せされます。
共益費込みの場合:坪単価の中にすでに共益費が含まれているため、表示された坪単価がそのまま実質負担に近い金額になります。
共益費込み坪単価(実質坪単価)の求め方
物件を正しく比較したいときは、賃料と共益費を合算した「共益費込み坪単価(実質坪単価)」に揃えて考えるのが基本です。計算式は次の通りです。
共益費込み坪単価 = (月額賃料 + 共益費)÷ 坪数
【計算例④:共益費別の物件を共込みに換算】 坪単価:2万円/坪、物件面積:10坪 月額賃料=20,000円 × 10坪 = 20万円 共益費:坪3,000円 × 10坪 = 3万円 → 実質支払額 = 23万円 → 共益費込み坪単価 = 230,000円 ÷ 10坪 = 坪2万3,000円
つまり「坪単価2万円」と表示されていても、共益費を含めた実質坪単価は2万3,000円になります。
共益費別は「安く見える」——2物件の比較例
共益費別の物件は、募集図面上の坪単価だけを見ると割安に見えることがあります。共込みに揃えて比較すると逆転するケースがあるため注意しましょう。
| 比較項目 | A物件(共益費別) | B物件(共益費込み) |
|---|---|---|
| 表示坪単価 | 1万8,000円/坪 | 2万円/坪 |
| 坪数 | 15坪 | 15坪 |
| 月額賃料 | 27万円 | 30万円 |
| 共益費 | 坪2,500円×15=3万7,500円 | 0円(賃料に内包) |
| 実質支払総額 | 30万7,500円 | 30万円 |
| 共益費込み坪単価 | 約2万500円/坪 | 2万円/坪 |
表示坪単価だけならA物件(1万8,000円)が安く見えますが、共益費を含めた実質坪単価ではB物件(2万円)のほうが割安になります。物件比較は必ず「賃料+共益費」の合計=共益費込み坪単価で行うことが、テナント選びで損をしないための鉄則です。なお敷金・礼金・保証金などの初期費用は別途かかるため、毎月のキャッシュフローと初期費用は分けて把握しておきましょう。
内見・申込前に確認したい坪単価のチェックポイント
坪単価は数字だけを鵜呑みにせず、内見や申込前に「その坪単価が実質いくらの負担になるか」を確かめることが大切です。以下のポイントを現地とヒアリングで確認しましょう。
- 共益費に何が含まれているか:清掃・共用電気だけなのか、空調・水道・ゴミ処理まで含むのかは物件ごとに異なります。共益費が安くても、光熱費や設備費が別請求だと総額は膨らみます。
- 坪単価に含まれない付帯費用:看板・袖看板の使用料、24時間営業や時間外空調の延長料金、共益費とは別の管理費・組合費などが後から加わることがあります。「毎月の総額」を必ず確認しましょう。
- 契約坪数と実測面積の差:契約上の坪数(壁芯・グロス)と、実際に使える有効面積(内法・ネット)は一致しないことがあります。柱・PS(パイプスペース)・共用部按分を含む表示だと、実質の坪単価は表示より割高になります。
- 消費税の扱い:店舗・事務所などの事業用賃貸は原則として賃料・共益費に消費税がかかります。募集図面が税抜表示か税込表示かで実支払額が変わるため、必ず確認してください。
- 賃料の妥当性を裏づける材料:同エリア・同用途の複数物件を共益費込み坪単価で並べ、極端に安い物件は視認性・設備の老朽化・動線など理由がないかを内見時に確かめます。前テナントの退去理由が分かる場合は聞いておくと安心です。
これらを「共益費込み坪単価」に織り込んで初めて、物件どうしを公平に比較できます。
坪単価の相場感と妥当賃料の判断
坪単価はエリアや物件の立地条件によって大きく異なります。繁華街や駅前の路面店であれば坪単価3〜5万円以上になることも珍しくなく、郊外や雑居ビルの上層階では坪単価5,000〜1万円台というケースもあります。同じ駅でも一等地の1階路面と裏通りの2階以上では坪単価に2〜3倍の差がつくこともあります。
初めてテナントを探す方にとっては「この坪単価は高いのか、安いのか」の判断が難しいと思います。基本的な目安として、同エリア・同用途の複数物件を共益費込み坪単価で比較することが有効です。
たとえば同じ駅周辺の飲食店向け物件を5〜10件ピックアップし、それぞれの共益費込み坪単価を並べることで、そのエリアの相場感をつかむことができます。坪単価が極端に低い物件は、設備の老朽化・日当たり不足・視認性の悪さなど、何らかの理由がある場合もあるため、内見時に確認することが大切です。
また、坪単価だけでなく「坪数に対して店舗運営に必要な席数・設備が収まるか」という観点も重要です。客席数やバックヤードの広さによって適切な坪数が変わるため、月額賃料の絶対額と売上見込みのバランスを総合的に考えることが求められます。業種別の坪単価の目安は、業種別坪単価相場や店舗物件の坪単価と業種別相場の見方もあわせてご覧ください。エリア別の相場水準や業種別の賃料負担率から適正賃料を判断する方法は、テナント賃料の相場と坪単価の見方で詳しく解説しています。
まとめ:坪単価と共益費込み坪単価の基礎知識
坪単価はテナント・店舗物件における最も基本的な賃料の指標です。ここで説明した内容を整理します。
- 坪単価の定義:1坪あたりの月額賃料
- 1坪 ≒ 3.3㎡(㎡から坪への換算は「÷3.3」)
- 月額賃料の計算:坪単価 × 坪数
- 共益費込み坪単価:(月額賃料+共益費)÷ 坪数。物件比較はこの実質坪単価で行う
- 内見時の確認:共益費の内訳・付帯費用・実測坪数・消費税の扱いをチェック
- 妥当性の判断:同エリア・同用途の複数物件を共益費込み坪単価で比較
テナント探しでは坪単価を基準に物件どうしを比較しつつ、共益費・初期費用・立地条件など複数の要素を総合的に判断することが重要です。共益費込み坪単価の計算方法を身に付けておくことで、物件情報を読み解く力が高まり、より自分に合ったテナント選びができるようになります。
