外国人採用がテナント経営で増加している背景
少子高齢化に伴う労働力不足により、飲食業・小売業・美容業などのテナント業種では外国人スタッフの採用が急増しています。観光庁のデータでは飲食業の外国人雇用者数は2024年時点で50万人を超えており、特に都市部のテナント店舗では欠かせない人材源となっています。
しかし、外国人採用には在留資格による就労制限という重要なルールがあります。この点を誤ると「不法就労助長罪」として事業主が刑事罰の対象となります。外国人スタッフを採用する前に、法令遵守の基本知識を押さえることが不可欠です。
在留資格と就労可否の基本
日本に在留する外国人は、入管法に基づく在留資格を持っており、この在留資格によって働ける仕事の種類・時間が制限されます。
就労が制限される主な在留資格
| 在留資格 | 就労の可否 |
|---|---|
| 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等) | 許可された活動のみ就労可 |
| 特定技能1号・2号 | 指定業種・職種での就労可 |
| 留学 | 原則週28時間以内(資格外活動許可が必要) |
| 家族滞在 | 原則週28時間以内(資格外活動許可が必要) |
| 永住者・定住者・日本人配偶者等 | 就労制限なし |
| 特別永住者 | 就労制限なし |
| 観光ビザ(短期滞在) | 就労不可(有償労働すべて禁止) |
テナント店舗でアルバイト採用が多いのは「留学生」ですが、週28時間以内という制限があります(長期休暇中は週40時間まで可)。この上限を超えて働かせると、雇用主も不法就労助長罪に問われます。
資格外活動許可の確認
留学生や家族滞在者が週28時間以内で働く場合、在留カードの裏面に「資格外活動許可」のスタンプが押されています。採用時に在留カードの裏面を必ず確認し、資格外活動許可の有無を確認してください。
テナント業種別の外国人採用事情
飲食店(特定技能「飲食料品製造業」「外食業」)
2019年に創設された特定技能制度では、外食業(飲食店での接客・調理・管理)が対象分野に含まれています。特定技能1号の在留者は5年間、特定技能2号は無期限で働くことができ、家族帯同も可能です。
特定技能外国人を採用する場合、登録支援機関への支援委託と雇用条件の基準(日本人と同等以上の報酬)を満たす必要があります。
小売店・アパレル(技術・人文知識・国際業務)
販売職は「技術・人文知識・国際業務」では原則として認められていません。ただし、語学力を活かした翻訳・通訳・外国人客対応という業務内容であれば認められるケースがあります。留学生アルバイトであれば販売業務も可能です。
美容室(特定技能外・個別の在留資格で対応)
美容師免許が必要な美容師業務は、海外の資格では日本では認められず、国家試験の合格が必要です。外国籍の美容師を雇用する場合は、日本の美容師免許を取得していることを確認してください。技能実習や特定技能1号では「美容業」は対象外のため、別途適切な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等)の取得が必要です。
採用時の法令遵守手続き
在留カードの確認義務
雇用主は外国人採用時に、在留カード(または特別永住者証明書)の原本を確認する義務があります。コピーではなく原本確認が必須で、確認した旨を記録しておくことが重要です。
確認すべき項目:
- 在留資格の種類(就労可能なカテゴリか)
- 在留期限(期限内か)
- 資格外活動許可の有無(裏面スタンプ)
- 就労制限の有無(表面に「就労不可」の記載がないか)
外国人雇用状況の届出義務
外国人を雇用・離職させた場合、ハローワーク(公共職業安定所)への外国人雇用状況の届出が義務付けられています(雇用保険被保険者の場合は雇用保険手続きと一本化、雇用保険被保険者でない場合は別途届出)。
届出期限:雇用保険被保険者の場合は翌月10日まで(雇用保険の資格取得・喪失届と同時に提出)。雇用保険被保険者でない場合は翌月末日までに別途届け出ます。
この届出を怠った場合、30万円以下の罰金が課されます。
マイナンバーの収集
日本に在留する外国人にもマイナンバー(個人番号)が付番されます。雇用時には本人確認書類(在留カード等)とマイナンバーを収集し、源泉徴収票・給与支払報告書等に記載します。
不法就労助長罪のリスクと防止策
不法就労助長罪(入管法第73条の2)は、不法就労外国人を雇用した場合または不法就労させるために自己の支配下に置いた場合に適用され、2025年6月施行の改正により5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科へと厳罰化されました(改正前は3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。
重要なのは、雇用主が「知らなかった」場合でも、確認を怠ったことによる過失として責任を問われる点です。
防止策
1. 採用前の書類確認の徹底
在留カードのコピーを採用書類に添付し、在留期限と就労可否を確認した記録を残します。
2. 在留カードの真正性確認
偽造在留カードが存在するため、法務省のウェブサイトで在留カードの真正性をオンライン確認することを推奨します(法務省「在留カード等番号失効情報照会」)。
3. 在留期限の管理
雇用中の外国人スタッフの在留期限を台帳で管理し、期限3ヶ月前に本人に更新を促します。在留期限切れのまま就労させると不法就労助長罪に該当します。
4. 就労時間の管理(留学生・家族滞在)
週28時間の上限を超えないよう、シフト管理システムで累計時間を自動管理することを推奨します。複数の職場を掛け持ちしている場合は合算で週28時間が上限のため、本人に申告を求めてください。
外国人スタッフとの労働契約の実務
外国人スタッフとの雇用契約は日本の労働基準法が全面適用されます。国籍による差別的な処遇は禁止されており、賃金・労働時間・休暇等は日本人と同等以上の水準が必要です。
雇用契約書の言語: 母国語での説明が努力義務とされています。厚生労働省は英語・中国語・ベトナム語・タガログ語等の雇用契約書モデルを公開しており、無料で利用できます。
最低賃金: 外国人であっても最低賃金(地域別最低賃金)の適用を受けます。
社会保険: 週20時間以上・月8.8万円以上(2024年時点)の従業員は健康保険・厚生年金への加入が義務です。外国人も同様に適用されます。
相談窓口と支援機関
| 機関 | 役割 |
|---|---|
| 出入国在留管理庁(入管局) | 在留資格・就労可否の確認相談 |
| 外国人技能実習機構(OTIT) | 技能実習・特定技能の相談 |
| 登録支援機関 | 特定技能外国人の生活支援・相談 |
| 社会保険労務士 | 外国人雇用全般の手続き代行 |
| ハローワーク外国人雇用サービスセンター | 採用支援・届出手続き |
外国人スタッフはテナント経営の重要な戦力ですが、法令遵守を徹底しなければ雇用主が深刻なリスクを負います。採用前の在留カード確認・雇用届出・就労時間管理の3点を必ず実践し、法令を守った採用体制を整備することが、持続可能なテナント経営の土台となります。
