訪問看護ステーションとは
訪問看護ステーションは、看護師・理学療法士・作業療法士等の医療専門職が在宅の患者宅を訪問し、療養上の世話・医療処置・リハビリを提供する医療・介護の拠点施設です。高齢化の進行・在宅医療推進政策・病床削減の流れを受け、2010年代以降は事業所数・従業者数ともに増加が続いており、2026年時点で全国に1万5,000か所以上の事業所が存在します。
看護師免許保持者・医療職経験者が開業するケースが多く、「訪問看護ステーション+デイサービス複合」「訪問看護+訪問介護の一体型運営」「専門特化型(難病・小児・精神科)」など多様な形態があります。
開設要件:指定申請と法令基準
都道府県への指定申請
訪問看護ステーションを開業するには、都道府県(政令市・中核市では市)への指定訪問看護事業者申請が必要です。健康保険法・介護保険法に基づく事業者指定を受けることで、公的保険(医療保険・介護保険)の請求が可能になります。保険外自費の訪問看護のみを行う場合は指定は不要ですが、事業の主体は保険適用が大半であるため、通常は指定申請を行います。
申請から指定までの期間は都道府県によって異なりますが、1〜3か月程度が一般的です。事業開始予定日から逆算して早めに申請手続きを開始してください。
人員基準(最重要)
訪問看護ステーションの指定要件として最も重要なのが人員基準です:
- 常勤換算で看護職員2.5名以上(非常勤の組み合わせで2.5名相当でも可)
- うち常勤の看護師(准看護師可)1名以上
- 管理者は保健師または看護師であること(当該事業所で専従が原則)
この人員要件を満たせない場合は指定が受けられません。開業時点でのスタッフ確保が事業立ち上げの最大の課題であり、求人・採用は物件探しと並行して最優先で進める必要があります。
設備基準
設備面での法的要件は比較的シンプルです。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省省令)では、専用の事務室(他事業と共用可能だが区分が明確であること)・手洗い設備・訪問看護記録書等の書類保管場所が主な要件です。
具体的な面積規定は省令上明示されていませんが、実務上はスタッフの更衣・申し送り・書類作成が行えるスペースとして20〜40㎡程度の事務所が最小限の構成として考えられています。都道府県によって独自の運用基準がある場合もあるため、申請先窓口に事前確認することを推奨します。
物件選定の実務ポイント
立地の考え方
訪問看護ステーションは利用者宅を訪問する「外出型」事業であり、来客をほとんど受けません。したがって、一般的な商業テナントのような「集客立地」「視認性」は不要です。重視すべき立地条件は以下の通りです:
- 訪問エリア(サービス提供区域)内であること:多くの訪問看護ステーションは事業所から車で30〜60分圏内を主要訪問エリアとします。事業所の位置が偏っていると移動コストが増大するため、訪問先となる居住エリア・病院・連携クリニックの集中する地域に近接する場所が望ましい
- スタッフの通勤しやすさ:看護師は早朝・夜間の緊急対応があるため、スタッフが通勤しやすい立地(主要駅近傍・駐車場確保可能)が採用・定着率に影響する
- 車・バイクの駐車場確保:訪問は自動車・電動自転車・バイクで行うことが多く、事業所内または近隣に社用車・スタッフ車用の駐車スペースが必要
物件タイプと賃料
訪問看護ステーションは、住居系用途地域でも設置可能なケースが多く(用途は「事務所」として扱う場合が多い)、一般的なオフィスビルのテナント・マンション1階の事務所区画・住宅街の戸建て改装物件など多様な物件形態が選択肢です。
賃料は20〜40㎡規模で月額5〜15万円程度(地域差大)が一般的であり、初期投資の面では他業種と比較して低く抑えられます。ただし、医療機器・備品(パルスオキシメーター・血圧計・体温計・看護用品・電子記録端末等)・車両費が別途必要です。
医療廃棄物と衛生管理
注射針・ガーゼ等の廃棄物(感染性廃棄物)が発生するため、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物(感染性廃棄物)の適正処理が義務付けられています。専門の廃棄物収集業者との契約が必要であり、事業所内での一時保管場所(防液・施錠管理)も設備として必要です。
また、訪問時に使用した医療機器・器具の消毒・洗浄スペースが事務所内に必要であり、洗浄槽・乾燥棚の設置が実務上求められます。こうした設備の設置可否と改修の可否を、物件選定時に確認してください。
収益モデルと開業後の経営管理
収益は保険請求(医療保険の訪問看護療養費、介護保険の訪問看護費)が主体です。訪問1回当たりの報酬単価(医療保険・介護保険ともに制度改定ごとに変更)と月間訪問件数が収益を規定します。
1名の看護師が1日に訪問できる件数は移動時間を含めると通常4〜8件程度であり、スタッフ数と稼働率が収益の天井を決めます。新規利用者獲得のためのケアマネジャー・医師・地域包括支援センターとの連携構築が営業の核心です。事業開始後の安定収益化には通常6〜12か月程度を要することを想定した運転資金計画が必要です。
