融資前に物件を押さえられる?
開業にあたって多くの方が「物件が決まらないと融資が進まず、融資が決まらないと物件が押さえられない」 という鶏卵問題に直面します。実務では「申込で仮押さえ→融資審査→融資特約付きで契約」という順序が標準的ですが、 書類の名称や特約の有無で想定外のリスクが生じます。このページで正しい進め方と落とし穴を確認してください。

融資審査と物件確保の時系列
- 物件内見・事業計画の策定:物件情報(住所・面積・賃料)が確定して初めて資金計画書が作成可能。
- 日本政策金融公庫 / 民間金融機関への事前相談:物件候補が3件程度に絞れた段階で事前相談すると、融資可能額の目安がわかる。
- 申込書提出・仮押さえ:申込金(家賃1ヶ月分程度)を預けて1〜2週間の仮押さえ。
- 融資本審査:物件が確定したら正式に融資申請。3〜4週間で結果が出る。
- 融資内諾→契約締結:融資内諾書を貸主に提示して契約。万一に備え「融資特約」を挿入。
- 融資実行・初期費用支払い:契約日 or 鍵引渡し日にあわせて金融機関から振込実行。
申込金・手付金・預り金の違い
| 書類名 | 法的性質 | 返還条件 |
|---|---|---|
| 申込金 / 預り金 | 契約前の意思表示。法的拘束力なし。 | 申込取下げで全額返還が原則。 |
| 手付金 | 契約成立を前提とした保全金。賃貸では手付の授受自体が一般的でなく、契約前に預けた金銭は名目を問わず預り金として扱われることが多い。 | 借主都合のキャンセルは没収・貸主都合は倍返しという解約手付の扱い(民法557条)は売買での規律で、賃貸では適用されないのが通例。契約前段階なら預り金として返還を求められる。 |
| 申込時のクレジット引落 | 保証会社の申込手数料など。 | 審査否決でも返還されないのが通例。 |
預ける際は、必ず書類の名称(申込金 / 手付金)と返還条件を領収書に明記してもらってください。
融資特約(ローン条項)の挿入は必須
「融資が否決された場合、契約を白紙撤回し手付金を全額返還する」という条項を融資特約といいます。 個人の住宅ローン契約では一般的ですが、事業用賃貸では標準ではないため、契約前に借主から交渉する必要があります。
貸主側から見ると手付金没収で契約解除されるリスクは大きな不安材料のため、 申込書段階で「融資内諾を条件とする」旨を書面で合意しておくとスムーズに挿入できます。
融資不成立リスクを下げる5つの準備
- 事業計画書を具体的に作成し、売上根拠を数字で示す
- 自己資金をできるだけ厚く用意する(公庫の創業融資では制度上の自己資金要件は撤廃されているが、自己資金が多いほど審査では有利になりやすい)
- 同業種での就業経験を履歴書に明記する
- 個人信用情報(クレヒス)の遅延・事故を解消しておく
- 融資申込は公庫と民間金融機関の両方で並行審査する