テナントのセキュリティリスクとは
店舗やテナントが直面するセキュリティリスクは、外部からの侵入・窃盗・万引きだけではありません。従業員による内部不正、情報漏えい、火災・設備トラブルへの対応まで、事業継続に影響するリスクを総合的に管理する必要があります。
特に2026年現在、無人店舗・夜間営業・無人レジの普及により、人によるセキュリティ監視が困難な状況が増加しています。テナントを新規開設する際は、物件選びの段階からセキュリティ対策を計画に組み込むことが重要です。
防犯カメラの設置ポイント
設置推奨箇所
防犯カメラは「見せること」と「記録すること」の2つの機能を持ちます。設置推奨箇所は以下の通りです。
入口・出口付近 はカメラの存在を来客に認識させる最重要箇所です。顔が正面から映る角度・高さ(床から2.0〜2.5m程度)に設置し、逆光補正機能のあるカメラを選びましょう。
レジ・会計カウンター は内外の不正行為を抑止する目的で設置します。従業員の行動も映るため、プライバシーポリシーの告知と労使間の合意が必要です。
バックヤード・倉庫 は商品・現金が集まる場所で、内部不正の抑止に効果的です。
駐車場・店舗外周 は夜間の不法侵入・車上荒らし対策に有効です。夜間撮影対応の赤外線カメラを選ぶことが重要です。
カメラの選定と運用
解像度は4K(2160p)以上を推奨します。犯罪発生時に顔・ナンバープレートを確実に特定できる画質が必要です。クラウド録画型(映像をサーバーに自動保存)なら、機器盗難時も映像データが保全されます。
録画保存期間は最低30日分以上が推奨されます。犯罪発生から通報・調査まで時間がかかるケースもあるため、短い保存期間では証拠保全に問題があります。
映像データは個人情報保護法の適用対象です。「防犯カメラ設置中」の告知掲示を行い、映像の目的外利用・第三者提供を禁止する社内ルールを整備してください。
入退室管理システムの選び方
電子錠・スマートロックの活用
鍵の管理は従来の物理鍵から電子的な入退室管理システムへの移行が進んでいます。複数スタッフが利用するテナントでは、物理鍵の紛失リスクや合鍵のコントロールが困難なため、電子錠への移行が合理的です。
ICカード・Felicaキー型 は交通系ICカードや専用カードで解錠するタイプです。カード紛失時もシステム側で無効化でき、物理鍵より安全性が高いです。
スマートフォン連動型(BLE・QRコード) は従業員のスマホで解錠します。鍵の貸し借り・権限管理がアプリ上で完結し、入退室ログも自動記録されます。
PIN番号型 はコストが低く導入しやすい反面、番号漏えいリスクがあります。定期的な番号変更ルールを設けてください。
入退室ログの活用
電子入退室管理システムは、誰がいつ入退室したかのログを自動記録します。このデータは労務管理(勤怠管理との連携)、防犯調査(不審な入退室の検出)、設備トラブルの原因特定(夜間の設備操作者の特定等)に活用できます。
テナント物件では、ビルの共用入退室システムにテナント区画を組み込む形で提供されるケースもあります。契約前に入退室管理システムの種類・権限設定の範囲を確認しておきましょう。
業種別の万引き・内部不正防止策
小売店・コンビニ型テナント
万引き防止の主な対策は3つです。EAS(電子商品監視)タグ は商品に電子タグを取り付け、不正持ち出し時にゲートでアラームが鳴るシステムです。衣料品・書籍・家電など幅広い業種で使われています。
AI万引き検知カメラ は2026年現在急速に普及しており、不審な行動パターンをAIがリアルタイム検知して従業員に通知します。人手不足の店舗での活用が特に有効です。
セルフレジ・無人決済端末 の導入時は、重量センサー・画像認識による不正持ち出し防止機能付きの機器を選ぶことが重要です。
飲食店テナント
飲食店では現金・食材の内部横領リスクが特有の課題です。POSシステムのログ管理(キャンセル・割引操作の記録)、現金釣り銭の定期チェック、食材棚卸しの定期実施が基本的な対策です。
バックヤードカメラと入退室管理を組み合わせることで、内部不正を効果的に抑止できます。
夜間・無人時間帯の対策
セキュリティアラームシステム
閉店後の無人時間帯は不法侵入リスクが最も高い時間帯です。センサー(人感・開閉・振動)と連動したアラームシステムを導入し、異常発生時に警備会社が自動出動する「機械警備契約」の締結を推奨します。
機械警備の費用は月額8,000〜35,000円程度(物件規模・警備会社により異なる)で、人を常駐させるより圧倒的にコストが低いです。
賃貸物件のセキュリティ上の注意点
テナント物件では、ビルの共用設備(防犯システム・セキュリティゲート)の仕様がテナントのセキュリティ水準に大きく影響します。物件内覧時に以下を確認してください。
ビル全体のセキュリティシステムの種類と時間帯、テナント専有部への個別セキュリティ追加の可否、配線・機器設置のための壁・天井工事の可否、近隣テナントの業種(高価品を扱う店舗が多いビルは侵入ターゲットになりやすい)。
セキュリティ対策は初期投資として捉えがちですが、被害を受けた場合の損失(商品・現金の損失、営業停止、顧客信頼の毀損)と比較すれば、予防コストは圧倒的に低いです。開業計画の段階から予算に組み込み、専門家への相談をお勧めします。
