内覧は「準備した人」が得をする
テナント物件の内覧は、事前の準備量によって得られる情報の質が大きく変わります。何も準備せずに「ただ見に行く」だけでは、確認すべきポイントを見落とし、後になって「あの時に聞いておけばよかった」と後悔することになります。
一方で、準備を整えた上で臨む内覧では、物件の潜在的なリスク・コスト・将来性を判断するための情報を効率よく収集できます。
本記事では、テナント仲介の専門家として数百件の内覧に立ち会ってきた経験から、内覧前の準備から当日の確認事項まで、実践的なガイドを提供します。
内覧前の事前準備:5つのステップ
ステップ1:事業計画の数字を整理する
内覧前に以下の数字を明確にしておきましょう。これがすべての判断基準になります。
- 月商目標(開業後1年後に目指す月次売上)
- 想定客単価と来客数
- 人件費・材料費の比率(原価率・人件費率)
- 賃料として支出できる上限(月商の5〜10%が目安)
- 内装工事の予算上限
- 保証金・礼金として用意できる現金
これらの数字を持って内覧に行くことで、「この物件の賃料は自社の事業計画と合うか」をその場で判断できます。
ステップ2:物件の公開情報を事前に研究する
内覧前に物件の公開情報(図面・写真・物件概要書)を入手し、以下を確認します。
- 面積(坪数)と形状(間口・奥行き)
- 現状の仕上げ(スケルトン・居抜き・内装あり)
- 設備(空調・換気・排水・電気容量)の概要
- 賃料・管理費・保証金の条件
- 契約種別(普通借家・定期借家)
図面は必ず入手して実際のレイアウトをイメージしましょう。図面と現地の差異(間取りの違い・柱の位置・配管位置)も内覧で確認すべきポイントです。
ステップ3:周辺エリアをGoogleマップで調査
内覧前にGoogleマップで物件周辺を調べます。
- 物件から半径500m・1km圏内の同業種店舗の数と状況
- 最寄り駅・バス停からの徒歩ルート(実際の歩きやすさ)
- 近隣の集客施設(スーパー・ショッピングモール・病院等)
- 周辺の歩行者・車の流れ(Googleストリートビューで視認性確認)
ステップ4:業者・専門家の同行依頼
初めてテナントを借りる場合は、内装業者や設備業者を同行してもらうことを検討してください。
専門家の視点で「この排水の位置では厨房レイアウトに制約がある」「電気容量が不足している」「天井高が低く換気ダクトの施工が難しい」といった見落としを防げます。
内装業者への同行依頼は、多くの場合無料で応じてもらえます(その後の工事発注を見込んだサービス)。
ステップ5:質問リストを作成する
内覧当日に聞きたいことを事前にリストアップしておきます。後述の質問リストを参考にしてください。
内覧当日の持参物リスト
- メジャー(間口・奥行き・天井高の実測用)
- スマートフォン(写真・動画撮影用)
- メモ帳・ペン
- 物件図面のプリントアウト(書き込みができるように)
- 懐中電灯(暗い場所・倉庫の確認用)
- 業種に関連する寸法要件メモ(厨房機器の搬入サイズ等)
写真は惜しみなく撮影してください。床・壁・天井・配管・コンセント・スイッチ・空調機・換気口・トイレ・倉庫・外観・看板スペース・周辺環境まで、可能な限り記録します。
内覧当日に確認・質問すべき項目
物件の基本情報
- [ ] 実際の使用可能面積(共用部廊下など除いた実効面積)
- [ ] 天井高の実測(各所で異なる場合あり)
- [ ] 前テナントの業種と退去理由
- [ ] 現在の空室期間(長期空室の場合は交渉余地あり)
設備・インフラ
- [ ] 電気容量(単相・三相の有無と容量)
- [ ] ガス(都市ガス・プロパン、口径)の有無
- [ ] 排水(グリーストラップの有無・位置)
- [ ] 水回り(給水・排水の位置と本数)
- [ ] 空調設備の方式と現状
契約条件
- [ ] 普通借家か定期借家か(重要)
- [ ] 更新の可否と更新料
- [ ] フリーレントの交渉可否
- [ ] 保証金・礼金の返還条件
- [ ] 入居可能日(スケジュール確認)
工事・管理に関すること
- [ ] 改装工事のオーナー承認手続き
- [ ] 工事業者の指定の有無
- [ ] 看板・外観変更の制限
- [ ] 営業時間の制限(深夜・早朝)
まとめ:内覧は「見る」ではなく「検証する」場
物件内覧は単に建物を見るための機会ではなく、「事業計画を実現できる物件かどうかを検証する」場です。
準備を整えて臨んだ内覧では、その場でほぼすべての判断材料を収集できます。仲介業者にも「準備した顧客」として信頼され、より詳細な情報提供や交渉サポートを受けやすくなります。
最初の内覧で完璧に判断しようとする必要はありませんが、複数回に分けて異なる時間帯に訪問し、周辺環境を含めた総合的な評価をすることをおすすめします。
