内見は「感覚」ではなく「チェックリスト」で臨む
テナント物件の内見は、図面や写真では分からない情報を直接確認できる唯一の機会です。しかし多くの出店希望者が「雰囲気が良かった」「立地が気に入った」という感覚だけで契約を決め、後から重大な問題に気づくというケースが後を絶ちません。
テナント仲介の現場で長年携わってきた経験から言えば、内見を「感覚」で終わらせることほど危険なことはありません。本記事では、内見時に必ず確認すべき30のチェックポイントを体系的に解説します。
電気・ガス・水道設備の確認
電気容量(アンペア・動力電源)
飲食店や美容室など設備機器が多い業種では、電気容量の確認が最優先です。
- 現在の契約電気容量(アンペア数)を確認する
- 三相200V(動力電源)の引き込みがあるか
- 分電盤の位置と空きブレーカーの数
- 増設工事が必要な場合の費用負担(貸主か借主か)
エアコン・業務用冷蔵庫・厨房機器などを同時稼働させると、容量不足でブレーカーが落ちることがあります。電力会社への増設申請は工期が長く、費用も数十万円単位になることがあるため、開業前に必ず確認してください。
ガス種と供給能力
飲食業では特に、業務用コンロ・食洗機・フライヤーのガス使用量を合計して、メーターの供給能力と照合することが重要です。
排水・グリーストラップ
- 排水口の位置と数
- グリーストラップの有無と容量(飲食業必須)
- 汚水枡の場所と排水経路
- 臭気の有無(実際に換気扇を止めて確認)
前テナントが飲食店だった場合、グリーストラップが残っている可能性があります。逆に初めて飲食用途で使う場合は設置工事が必要です。設置費用の負担者を事前に確認しましょう。
建物・構造・設備の状態確認
天井・床・壁の状態
- 天井の高さ(梁下有効寸法を実測)
- 床の水平度(傾きがあると設備設置に影響)
- 壁や天井のシミ・カビ・亀裂の有無
- 既存内装の撤去義務(スケルトン渡しか)
天井高は業態によって必要最低限が異なります。飲食店では排気ダクトの設置スペースとして2.5m以上が一般的な目安です。
空調設備
- エアコンの台数・能力・設置位置
- 貸主設備か借主設備か
- 修理・交換時の費用負担の取り決め
- 室外機の設置スペースと排熱環境
業務用エアコンは1台数十万円〜100万円以上するため、引渡し時に含まれるかどうかは重要な確認事項です。
トイレ・バックヤード
- トイレの数(男女別は必要か)
- 給湯設備の有無
- バックヤードの広さと荷物の動線
- 荷受けスペース・搬入口の幅と高さ
法令・規制の確認
用途地域と業種制限
- 建物の用途地域(商業地域・近隣商業地域・準工業地域など)
- 営業しようとする業種が法令上許可されるか
- 深夜酒類提供飲食店の営業可否(住居系用途地域は不可)
- 風俗営業法上の距離制限への適合
消防設備の状態
- スプリンクラー・自動火災報知設備の有無
- 誘導灯・消火器の設置状況
- 内装変更時の届出要否(消防署への事前確認が必要)
飲食店への転用や大規模な内装工事では、消防署への「内装変更届」が必要になるケースがあります。無届けで工事すると完成後に是正を求められることもあるため、内見時に仲介業者に確認しましょう。
周辺環境・立地の確認
実際の人流を自分の目で確認
- 内見の曜日・時間帯は業態に近いタイミングで行う
- 朝・昼・夕・夜と複数回訪問するのが理想
- 近隣の競合店舗の営業状況
- 前面道路の交通量・歩行者数の実測
不動産会社提供の人流データは参考値に過ぎません。自分の目と体で確認することが最も信頼できる情報です。
騒音・臭気・振動
- 近隣からの騒音源(幹線道路・線路・工場)
- 上下階や隣接テナントの業種と影響
- 深夜帯の静寂度(夜間営業予定の場合は夜間に確認)
搬入・駐車
- 納品車両の駐車スペースと搬入口の使いやすさ
- 近隣の時間貸し駐車場の台数と料金
- 自転車・バイク駐輪スペースの有無
契約条件の現地確認
既存造作・設備の状態
- 残置物(前テナントの造作・設備)の有無と処分条件
- 残置物を引き継ぐ場合の取り決めと費用
- 建物の修繕履歴(エアコン・給排水設備の交換時期)
看板・外観の制限
- 看板取り付け可能箇所と制限
- ファサード変更の可否(外壁塗装・シート貼りなど)
- テナント独自の外壁工事に対する貸主の方針
まとめ:内見は「2回以上」が原則
テナント物件の内見は、できれば異なる曜日・時間帯に2回以上行うことをお勧めします。1回目は設備・構造の確認、2回目は人流・周辺環境の再確認、と役割を分けると効率的です。
本記事のチェックリストを印刷して持参し、担当の仲介業者にも同席してもらいながら確認することで、契約後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。気になる点は遠慮なく質問し、必要であれば専門家(建築士・設備業者)の同行内見も検討してください。
