食品表示法を知らずに出店すると何が起きるか
食品を販売するテナントにとって、食品表示法は「知っていて当たり前」の法律です。しかし実際には、「惣菜コーナーに手作りラベルを貼っているだけ」「アレルゲン表示が漏れている」など、法的要件を満たしていないケースが少なくありません。
違反が発覚した場合、行政指導・改善命令にとどまらず、悪質なケースでは刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が科されることもあります。出店前に食品表示法の基礎を正しく理解しておくことは、テナント経営者にとって必須のリスク管理です。
食品表示法の対象と基本構造
食品表示法は2015年に施行された法律で、それまで食品衛生法・農林物資の規格化に関する法律(JAS法)・健康増進法に分散していた食品表示ルールを一本化したものです。
対象となる食品と表示義務者
食品表示法が定める表示義務は、食品の種類(加工食品・生鮮食品・添加物)と販売形態(容器包装の有無・量販売か量り売りか)によって異なります。
| 対象 | 主な表示義務 |
|---|---|
| 容器包装に入れた加工食品 | 名称・原材料名・添加物・内容量・賞味/消費期限・保存方法・製造者等・アレルゲン |
| 容器包装に入れた生鮮食品 | 名称・原産地 |
| 店内製造の惣菜・弁当(量り売り含む) | アレルゲン表示が主な義務(容器包装の有無で変わる) |
飲食店のテイクアウト商品や、スーパー・百貨店の惣菜コーナーは「店内製造加工食品」として扱われる場合が多く、フルパッケージの加工食品ほど詳細な表示は求められませんが、アレルゲン表示は義務です。
アレルゲン表示の実務
特定原材料8品目と特定原材料に準ずる20品目
食品表示法では、食物アレルギーを引き起こしやすい食品を「特定原材料」として表示を義務付けています(2026年現在)。
表示義務あり(8品目):えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)
表示推奨(20品目):アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン
※2023年にくるみが推奨から義務に格上げされています。
飲食テナントでの表示方法
容器包装に入れて販売する惣菜・弁当では、パッケージへの印字またはラベル貼付でアレルゲンを表示します。量り売りや店内飲食では、メニューへの掲載・卓上POP・口頭説明など複数の方法が認められますが、「お客様が確認できる状態」であることが求められます。
実務上のポイントは「コンタミネーション(交差汚染)リスク」の管理です。同一厨房で複数アレルゲンを使う場合、意図せずアレルゲンが混入する可能性があります。「○○を使った製品と同一ラインで製造しています」などの注意書きを検討する必要があります。
賞味期限・消費期限の設定
2つの期限の違い
- 消費期限:期限を過ぎたら食べないほうがよい食品(弁当・生菓子・惣菜など)
- 賞味期限:期限後もすぐに食べられなくなるわけではないが品質が保証される期限(スナック・缶詰など)
手作り惣菜・弁当を販売するテナントでは、食品衛生の専門家(食品衛生責任者)と相談のうえで消費期限を設定し、保存温度条件とともに表示することが必要です。
客観的な根拠を持つ
食品表示法では、期限の設定根拠を客観的に示すことが求められます。製造・販売事業者は、科学的な根拠(保存試験・微生物試験等)に基づいて期限を設定し、その記録を保持することが重要です。
検査・指導への備え
保健所の定期巡回
食品を販売するテナントには、保健所による定期的な立ち入り検査があります。食品表示の適正性も確認対象となるため、常に法令要件を満たした表示を維持することが必要です。
食品表示責任者の育成
スタッフ全員が食品表示のルールを理解していることが理想ですが、まずは食品表示に責任を持つ担当者(食品表示責任者)を社内で決め、法令改正時の対応窓口とすることをお勧めします。消費者庁・自治体の研修を活用して知識をアップデートしてください。
まとめ
食品表示法は頻繁に改正が加わる分野です。特にアレルゲン表示の義務化品目は近年拡充されており、「以前は問題なかった」表示が現在は違反になっているケースもあります。
テナント出店の準備段階から食品表示の要件を確認し、保健所や食品衛生コンサルタントに相談しながら適切な表示体制を整えることが、安定した事業継続の基礎となります。法令違反による営業停止・回収命令は、事業者にとって取り返しのつかないダメージを与えかねません。コンプライアンスを経営の基本に据えて出店準備を進めましょう。
