テナント入居前のインフラ確認が重要な理由
テナント物件を契約する際、建物外観や内装ばかりに注目しがちですが、電気・ガス・水道・通信(インターネット)といったインフラ環境の確認は、開業後の運営効率と費用負担に直結する最重要項目です。特に飲食店や製造業では、これらのインフラ容量が営業継続の命運を分けます。
インフラ確認を怠ると、入居後に「電気容量が足りず大型調理機器が使えない」「ガスが都市ガスでなく工事費が膨らんだ」「光ファイバーが引けず開業が遅れた」といった問題が後から発覚し、工事費と機会損失の両方が生じます。内見時・契約前に必ず確認することが欠かせません。
電気設備の確認
契約電力と業種ごとの必要容量
テナント物件の電気容量は、契約電力(単位:kW または A:アンペア)で表示されます。
- 基本的な換算:契約電流100Aは、契約電力約10kW相当(単相200V系の場合)となります。供給方式(単相100V/単相200V/三相200V)によって換算が変わるため、電力会社または建物管理会社に確認しましょう。
- 業種別の目安:一般的な小売店舗は30〜50A、飲食店は60〜150A、エステ・ネイルサロンは40〜80A、製造業では200A以上が必要なケースも珍しくありません。
分電盤・引込容量の現地確認
既存の分電盤(ブレーカーパネル)を確認し、主幹ブレーカーの容量と各ブレーカーの配分を把握しましょう。必要容量が現在の引込容量を超える場合、電力会社への増設申請と工事が必要になります。工期は申請から数週間〜数ヶ月かかる場合もあるため、開業スケジュールに余裕を持たせることが重要です。
三相200Vが必要かの確認
大型業務用エアコン・コンプレッサー・大型調理機器などを使用する業種では、三相200V(動力電源)が必要です。建物によっては三相が引き込まれていない場合があり、引込工事の費用は貸主・借主どちらが負担するかを契約前に確認しましょう。
ガス設備の確認
供給形式の3パターン
テナント物件のガス供給形式は「都市ガス」「プロパンガス(LPG)」「ガス設備なし」の3パターンです。
都市ガス:ガス会社の本管から供給されるため、ランニングコストが安定しやすい。飲食店では最も一般的。
プロパンガス(LPG):都市ガスが引き込まれていないエリアや建物で採用。ボンベ交換が必要で、ガス料金は都市ガスより割高になる傾向があります。プロパンを選択する場合はランニングコストを試算しましょう。
ガス設備なし:オール電化テナントの場合、IHクッキングヒーター・電気オーブンを使用するため、電気容量の確保がより重要になります。
飲食店のガス使用量と設備容量
飲食店では業態ごとにガスの使用量が大きく異なります。ラーメン・焼肉・天ぷらなど火力を多用する業態では、ガスメーターの号数(流量)と給排気設備(換気・排煙ダクト)の容量確認が欠かせません。既存のメーター号数が不足する場合はガス会社への増設申請が必要です。
水道・給排水設備の確認
給水圧と水量の確認
飲食店・美容室・クリニックなどの業種では、給水量と水圧が営業に直結します。建物の給水方式(直結給水/受水槽方式)と水圧を管理会社に確認しましょう。特に高層ビルの上層階では水圧が低下するケースがあり、加圧ポンプの設置を検討する必要が生じる場合があります。
排水管の径と勾配
大量の排水を扱う飲食店では、排水管の径・勾配・排水能力を確認しましょう。老朽化した配管では詰まりや悪臭のトラブルが生じやすく、修繕費が予想外に発生することがあります。
グリーストラップの有無と設置義務
飲食店では下水道法の規定により、グリーストラップ(油水分離槽)の設置が必要です。既存テナントが飲食店だった場合はグリーストラップが設置済みのことが多いですが、未設置の場合は設置工事費が初期コストに加算されます。設置場所・容量・清掃方法(産業廃棄物として処理が必要)も事前確認が必要です。
給湯設備の容量
美容室・エステ・クリニックなど給湯使用量が多い業種では、給湯器の容量(号数)を確認しましょう。複数の洗い場・シンクを同時使用する場合に、給湯能力が不足するケースがあります。
通信回線(インターネット・電話)の確認
光ファイバーの引込可否
テナント入居時の通信回線確保は営業開始に不可欠です。まず建物が光ファイバー対応か(既設か・これから引込が必要か)を確認しましょう。
- 引込済みの場合:前テナントが使っていた回線業者と契約を継続するか、新規に業者を選定するかを決定します。工事不要で開通できることが多く、最短1〜2週間程度で利用開始できます。
- 新規引込の場合:通信会社への申請・許可・工事で1〜2ヶ月以上かかることがあります。開業予定日の2〜3ヶ月前には手続きを開始しましょう。
固定電話回線とビジネスフォン
店舗によってはビジネスフォン(内線設備)が既設の場合があります。旧テナントからの引継ぎ可否・撤去費用負担の確認を行いましょう。光IP電話を新規導入する場合は光ファイバーと同時に申し込むとスムーズです。
セキュリティ・POSシステムの通信環境
POSレジ・防犯カメラ・キャッシュレス決済端末など、通信が必要な設備が増えています。安定した有線LANの引き込みと無線LAN環境の整備計画を開業前に確定させましょう。
インフラ確認チェックリスト
| 項目 | 確認内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 電気容量 | 主幹ブレーカーの容量・三相対応の有無 | 現地確認・管理会社問合せ |
| ガス供給形式 | 都市ガス/LPG/なし・メーター号数 | 現地確認・ガス会社問合せ |
| 給水圧・給排水管径 | 水圧・排水管の状態・グリーストラップの有無 | 管理会社・工事業者の現地診断 |
| 通信回線 | 光ファイバー引込の有無・工期 | 通信会社への事前問合せ |
| 設備引継ぎ条件 | 前テナントからの引継ぎ可否・費用負担 | 貸主・管理会社との書面確認 |
インフラ確認は、仲介会社だけでなく電気・ガス・通信の各専門業者に現地を見てもらうことで、より正確な情報を得られます。契約前に設備診断を依頼し、必要な追加工事の費用見積もりを取得したうえで、初期投資総額を算出することを強くお勧めします。
